【第144回】日印シンポで浮かび出る戦後体制の限界
国基研企画委員 冨山泰 台頭した中国の軍事的圧力にさらされるアジアの二大民主主義国、日本とインドの安全保障分野での協力拡大を話し合う国際シンポジウムが4日、東京で開かれる。インド側には日本の協力への期待が強いが、現状では日本にできることはほとんどなく、軍事的責任を果たすことに目をつぶってきた日本の戦後体制の問題点をえぐり出す機会になりそうだ。 安保協力に拡大の余地 シンポジウムは国家...
【第143回】4回目の慰安婦騒動、政府は組織的反論を
国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力 慰安婦問題が昨年からまた燃え上がってきた。これで4回目だ。1991年に朝日新聞がキーセンとして人身売買された女性を「挺身隊として強制連行された」とする大誤報をしてから、93年に慰安婦の「強制連行」を事実上認めた河野洋平官房長官の談話が出るまでが1回目。96年にすべての検定済み中学歴史教科書に慰安婦強制連行の記述が入り、有識者と議員らが事実誤認だと問...
【第142回】日米連携に明快な理念と約束履行が必要
国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一 5月6日から13日まで、拉致議連・家族会・救う会訪米団の一員としてワシントンを訪れた。北朝鮮による米国人拉致疑惑の浮上もあり、対北・対中政策における日米保守勢力の連携に、一段の手応えを感じた。拉致議連役員の督励を受けた日本大使館の尽力で、イリアナ・ロスレーティネン下院外交委員長(共和、フロリダ州)らとの面談が次々実現し、予想以上の成果が上がった。し...
【第141回】報道機関の使命忘れた中日新聞
国基研副理事長・弁護士 髙池勝彦 一旦同意した意見広告 中日新聞は、「河村発言を支持し『南京』の真実を究明する国民運動」(略称「南京の真実国民運動」、代表渡部昇一上智大学名誉教授)との間で、一旦同意した意見広告の掲載を、社論に合はないから拒否すると通告したといふ。 多様な意見の存在を広く知らせることが民主主義社会存立の不可欠の条件であるから、法令や公序良俗に反しない限り、報道機関とし...
【第140回】したたかなベトナムはどこへ
国基研理事長 櫻井よしこ 連休中、国基研代表団長としてベトナムの首都ハノイを訪れ、ベトナム外交学院及び社会科学院中国研究所等との意見交換を行った。焦点は中国問題、特に南シナ海問題の解決にベトナムはどう対処し得るか、であった。 一連の会談で年来の私のベトナム観は一変した。フランスと戦って独立を果たし、米国に撤退を決意させ、1979年の中国の侵略を退けたベトナムこそ、自主独立の気概溢れる国...
【第139回】平和を求めるための改憲
国基研副理事長 田久保忠衛 サンフランシスコ講和条約発効60周年を迎えて憲法論議が盛んになろうとしている。日本人一人ひとりが答えなければならないのは、占領中に抵抗の手段も全くないまま強制された憲法を独立回復後60年も経つのに一向に変えようとしない理由は何か、という疑問である。「押しつけ憲法だ」といまだに米国を批判する向きもあるが、独立して60年間手を付けずに憲法を放っておいたのは日本人だ。米...
【第138回】尖閣買収を「ふるさと納税」で応援しよう
国基研理事・拓殖大学大学院教授 遠藤浩一 自民党の石原伸晃幹事長が訪中を延期した。 父親である石原慎太郎東京都知事による尖閣諸島購入表明で、講演を予定してゐた上海の大学が受け入れに難色を示したからと伝へられる。伸晃氏は「頑固オヤジが暴れてゐるので、延期することになつた」(19日)と、父親のせゐで取り止めになつたと言はんばかりの口吻こうふんだが、慎太郎氏にぼやくのではなく、突然「来るな」...
【第137回】金正恩先軍政権を助けてはならない
国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力 新政権は不安定 4月15日、北朝鮮では金日成生誕100周年行事として軍事パレードが行われ、大陸間弾道ミサイルらしきものが公開された。そこで金正恩が演説し、民生を犠牲にして核ミサイル開発と対南工作を続ける「先軍政治」を継承することを宣言した。 金正恩は昨年末の軍最高司令官に加え、4月11日に党第1書記、13日に国防委員会第1委員長という最高権...
【第136回】超党派議員が中国の人権弾圧に初の抗議
国基研理事長 櫻井よしこ チベット亡命政府首相ロブサン・センゲ氏招致委員会の長として首相をお招きし、4月3日、国家基本問題研究所主催のシンポジウム「アジアの自由と民主化のうねり 日本はなにをすべきか」を開催した。強い風雨の中、会場がほぼ埋め尽くされたことに、まず胸を打たれた。 チベット、ウイグル、モンゴルの代表から、非道を極める中国の異民族弾圧が具体的に指摘され、世界は、自由、民主主...
【第135回】極めて深い「ハトヤマ」日本への侮蔑の念
国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一 3月下旬に米国の首都ワシントンを訪れ、約10日間、有力議員の外交政策スタッフや北朝鮮・中国問題の専門家らと意見交換を行った。彼らが一様に、最も強く失笑と侮蔑を露わにしたのは、北朝鮮の金正恩にでもイランの神権政治家に対してでもなく、「ハトヤマ」という名を口にする時であった。無定見・無責任・軽薄を極めた「ハトヤマ」的政治から日本が訣別できねば、遠からず...