【第551回・特別版】米の新外交チームに期待すること
国基研企画委員兼研究員 冨山泰 米政府のアジア政策立案・遂行の要となる東アジア・太平洋担当国務次官補に、デービッド・スティルウェル退役空軍准将の起用が決まった。軍人出身の戦略専門家だから当然なのだが、スティルウェル氏は対中タカ派、同盟重視論者として定評があり、日本政府にとって政策調整をしやすい米側の実務責任者になるかもしれない。 ●アジア通の次期国務次官補 ステ...
【第550回】国家自殺の道を行く韓国
国基研企画委員・麗澤大学客員教授 西岡力 私は10月1日付の本欄で、11月1日から発効する南北軍事合意書の危険性を指摘した。そこで書いたように、一方的な武装解除とも言える合意書に対して、韓国内では退役軍人や保守派から批判の声が高まっている。しかし、驚くべきことに、現役の軍人や国防省幹部の中で辞表を出して抗議する者が1人も出てこない。それどころか、公然と危険性を指摘する者もい...
【第549回】米政府・議会が対中強硬姿勢で一致
国基研企画委員兼研究員 冨山泰 中国の人権状況などを監視している米議会の超党派委員会が10日、中国の習近平政権によるウイグル人らイスラム教徒の抑圧を「人道に対する罪」と糾弾する年次報告書を公表した。4日にペンス副大統領が中国の内政、外交、経済、軍事政策を網羅的に批判する演説をしたのに続くもので、米国の政府と議会が中国に対する厳しい姿勢で歩調を合わせた。 ●「北朝鮮並...
【第548回】米中新冷戦への覚悟
国基研企画委員・主任研究員 湯浅博 トランプ米政権の対外政策は、安全保障と通商の両面から中国と対決し、「新冷戦」の到来を覚悟したかのようだ。ペンス副大統領がワシントンで4日行った演説をもって、レーガン元大統領がソ連を「悪の帝国」と呼んだ瞬間を彷彿とさせるとの論評は妥当であろう。米国はこれまで、国際秩序を無視した中国の影響力拡大を見過ごしてきたが、ペンス演説は「それらの日々を...
【第547回・特別版】南北軍事合意に専門家の批判強まる
国基研企画委員・麗澤大学客員教授 西岡力 9月の平壌での南北首脳会談の際、韓国の国防相と北朝鮮の人民武力相(国防相に相当)の名前で出された軍事合意文書に対し、韓国軍関係者から批判が高まっている。 「歴史的な『板門店宣言』履行のための軍事分野合意書」と銘打たれた同文書では、2018年11月1日より、①地上では、南北の軍事境界線より5キロ以内で砲兵射撃訓練および連隊規模以上...
【第546回】「対中共闘」を打ち出した日米共同声明
国基研企画委員・東京国際大学教授 大岩雄次郎 日本政府はこれまで、日米2国間による自由貿易協定(FTA)交渉入りの回避に腐心してきたが、9月26日の日米首脳会談で、2国間の物品貿易協定(TAG)締結に向け、関税協議を含む新たな通商交渉に入ることに合意した。 政府は、TAGとFTAとは全く異なると主張するが、「日米共同声明」の内容によれば、実質的なFTA交渉に繋がる最初の...
【第545回】3選された安倍首相の課題
産経新聞正論調査室長 有元隆志 米国の大統領は再選されるとレームダック(死に体)化が始まり、2期目半ばの中間選挙を過ぎるとそれが加速する。自民党総裁に3選され、今の規定では4選がない安倍晋三首相の場合はどうか。総裁選前にある側近が首相に、レームダックにならないためにも任期途中で退陣する可能性を聞いた。首相は「最後までやり抜く」と言い切ったという。 ●「戦後日本外交の...
【第544回】プーチン氏は本当に法学士なのか
北海道大学名誉教授 木村汎ひろし 「一切の前提条件を付けずに年内に平和条約を結ぼう」。ロシアのプーチン大統領は、ウラジオストク開催の「東方経済フォーラム」で、安倍晋三首相にこう提案した。この発言は、次の疑問を強める。本人が自慢するように、果たしてプーチン氏をレニングラード(現サンクトペテルブルク)国立大学の法学部出身者とみなしてよいのか。 ●一知半解 プーチン氏...
【第543回・特別版】ロシアが展開した帝国主義外交
国基研企画委員・主任研究員 湯浅博 帝国主義外交の典型は、大きな軍事力を振りかざしながら、にこやかに相手国を懐柔する狡猾こうかつさではなかったか。ロシアのプーチン大統領はまさに、「東方経済フォーラム」に参加した安倍晋三首相をソフトな声で迎えながら、その背後で中国との合同軍事演習「ボストーク2018」をぶつけてきた。中露関係の強さを合同演習で敵対国の米国に誇示しつつ、その同盟...
【第542回】地球温暖化は止まった
国基研客員研究員・米アラスカ大学名誉教授 赤祖父俊一 今年夏の猛暑や、台風に伴う洪水を含め、気候や環境の異変が人間の経済活動で放出される温室効果ガスによる地球温暖化のせいではないかと、地球の将来を心配している方も多いと思う。 そこでまず、石炭、石油の燃焼により排出される二酸化炭素など温室効果ガスが依然増加しているにもかかわらず、地球全体の気温上昇は西暦2000年頃よりほ...