【第585回】欧州の衰退で力の均衡に変化
国基研副理事長 田久保忠衛 米国のシンクタンク、ジャーマン・マーシャル・ファンドの研究者アンドルー・スモール氏などは、欧州連合(EU)が3月22日の首脳会議で中国の対欧経済攻勢に対してよくまとまって対応策を打ち出したと称賛しているが、これは少数意見だろう。ネオコン系の米歴史学者ロバート・ケーガン氏は欧州の弱さと分裂を「米国からの戦略的分離」「EUのほころび」「欧州の終末」な...
【第584回・特別版】新元号は歓迎するも手続きに疑問
国基研理事・国士舘大学特任教授 百地章 「元号離れ」どころか国民的フィーバーの中で、新元号が発表された。平成に代わる新元号は「令和」である。出典は日本最古の和歌集『万葉集』であり、安倍晋三首相の説明によれば、「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つという意味が込められている」という。 非常に素晴らしい元号であり、国民の多くも歓迎しているようだ。新元号の下に、天皇と...
【第583回】対露交渉「2島戦術」破綻は鮮明だ
産経新聞論説委員・前モスクワ支局長 遠藤良介 危惧された通り、ロシアとの北方領土交渉が難航している。安倍晋三首相は昨年11月、プーチン露大統領との間で、日ソ共同宣言(1956年)に基づいて交渉を加速させることに合意した。同宣言が「平和条約締結後に引き渡す」としている色丹島と歯舞群島の返還へ向け協議が進むかと思われたが、ロシアは「ゼロ回答」を突きつけている。 ロシアのガル...
【第582回・特別版】北幹部5人逃亡で金体制の動揺拡大
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 ハノイでの米朝首脳会談が物別れに終わったことで、北朝鮮内部の動揺が激しくなってきた。会談が成功して経済制裁が緩み、対中貿易が再開し、韓国の経済支援が入り、日本から賠償金がくるとする事前学習をさせられていた人民と幹部に失望と不満が広がっている。独裁者の金正恩委員長は宣伝扇動部の末端活動家らを集めて「自給自足、自力更生で耐えよ」...
【第581回】「一帯一路」でG7の一角崩れる
国基研副理事長 田久保忠衛 中国が巨大経済圏構想「一帯一路」に欧州を巻き込もうとする勢いがにわかに強まってきた気配だ。習近平国家主席は欧州歴訪の最初の訪問国にイタリアを選び、22、23の両日、ローマでマッタレッラ大統領、コンテ首相とそれぞれ会談し、一帯一路推進を覚書で確認した。次いで李克強首相は4月9日にブリュッセルを訪れ、欧州連合(EU)首脳と短時間の会談をした後、クロア...
【第580回・特別版】少数民族弾圧と中華思想
静岡大学教授 大野旭(楊海英) 米国務省は13日、2018年度の世界各国の人権状況をまとめた報告書を公表し、この中で中国政府の少数民族抑圧政策について、実例を挙げて分析し、非難した。 中国政府によって拉致され、強制収容所に監禁されているウイグル人などは80~200万人に達する、と報告書はいう。ウイグル人のほかに、同じトルコ系の民族であるカザフ人も含まれている。ウイグル語...
【第579回】対北戦略の基本は「最大圧力」
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授 島田洋一 安倍政権は、欧州連合(EU)と共同で11年間続けてきた、国連人権理事会への北朝鮮非難決議案の提出に今年は加わらない方針を表明した。 拉致問題解決に向けた交渉の環境づくりという意図があるのだろう。理念に疑念を生じさせても敢えてこの行動を取ったことによって、日朝首脳会談の可能性は高まるかも知れない。しかし、それは北朝鮮の金...
【第578回・特別版】「債務の長城」が包囲する嘘の経済成長
産経新聞特別記者 田村秀男 5日に開幕した中国の全国人民代表大会(全人代、共産党が仕切る擬似国会)の冒頭で、李克強首相は今年の国内総生産(GDP)の実質成長率目標を6%台前半に設定すると発表したが、真に受けてはならない。習近平党総書記・国家主席も李首相も、経済実態からすれば嘘であっても統計上は達成できると踏んでいるだけなのだ。 ●操作される統計数値 李氏は遼寧省...
【第577回】拉致被害者救出の最後のヤマ場が近づいている
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 ハノイの米朝首脳会談が決裂した後、「米朝関係が緊張した時、日朝接近が起きる」などとして、拉致問題が動くかもしれないという観測が国内に流れた。私は、それはないと判断している。過去2回の米朝首脳会談で、拉致問題は核ミサイル廃棄交渉に組み込まれたから、米朝交渉が進展するまで北朝鮮は日本との交渉に応じないと見るからだ。一方、米朝が進...
【第576回・特別版】虐待防止に必要な専門職育成と「親育ち」支援
国基研理事・麗澤大学大学院特任教授 髙橋史朗 千葉県野田市の小4女児虐待死事件を契機に、政府与党は今国会提出予定の児童福祉法と児童虐待防止法の改正案に体罰禁止を盛り込む方向で調整している。2月27日、自民党の「虐待等に関する特命委員会」は、厚生労働部会との合同会議を開き、児童福祉司をはじめ専門職の増員と専門機関の連携等19項目の提言について協議した。 ●増員・連携だ...