【第511回】欺瞞と裏切りの板門店宣言
国基研企画委員・麗澤大学客員教授 西岡力 「両首脳は、朝鮮半島にもはや戦争はなく、新たな平和の時代が開かれたことを8000万のわが同胞と全世界に厳粛に宣言した」。4月27日、韓国の文在寅大統領と北朝鮮の独裁者金正恩委員長が発表したいわゆる板門店宣言の冒頭部分だ。私はこの宣言に強烈な違和感を覚えたのだが、その理由の第一がこの部分だった。 韓国を含む国際社会は、北朝鮮の...
【第510回・特別版】米軍高官証言に見る日本への期待
国基研企画委員 太田文雄 日本の野党やメディアが財務事務次官のセクハラ問題や野党議員に対する自衛隊員の暴言問題で沸いていた先週、米議会の公聴会では国際軍事情勢に重要な影響を与える将官2人の証言があった。 ●「強い日本」望む次期太平洋軍司令官 一人は太平洋軍司令官に指名されたフィリップ・デービッドソン海軍大将で、筆者が米海軍兵学校交換教官に任じていた時の学生で...
【第509回】徘徊する吉田ドクトリンの亡霊
国基研副理事長 田久保忠衛 戦争に敗北した日本が一時期目指した「軽武装・経済大国」の代名詞「吉田ドクトリン」の亡霊は永田町に生きていた。自民党の岸田文雄政調会長率いる岸田派(宏池会)が4月18日に公にした政策である。 ●岸田派が「平和憲法」擁護 読売新聞4月19日朝刊の記事によれば、政策骨子の名称は「K-WISH」。キーワードは「トップダウンからボトムアップ...
【第508回】自由世界が直面する危険な世界
国基研企画委員 湯浅博 米英仏による今回のシリア攻撃は、世界への関与にうんざりしていた米国が「自由世界の戦略本部」として踏みとどまった証しではないか。この攻撃で、シリアを支援するロシアを直接的に抑止し、中国と北朝鮮を間接的に牽制した。国際秩序は今、これら独裁色の強い権威主義的政権からの挑戦を受けている。しかも、いくつかの危機は、米国に不都合な時期に同時発生する複雑さだ。...
【第507回】日本の主導でWTO活性化を
国基研企画委員・東京国際大学教授 大岩雄次郎 米国と中国の貿易摩擦は、双方の世界貿易機関(WTO)提訴に発展し、既に株式市場をいたずらに混乱させ、世界経済不安定のリスクを高めている。トランプ政権の米国第一主義が世界各国の保護主義や内向き志向を助長する中、その流れを押し戻し、自由で公正な通商ルールを世界に広げるには、WTOを再活性化することが不可欠である。日本のリーダーシ...
【第506回】「日米韓」対「中朝」の対立復活へ
国基研副理事長 田久保忠衛 4月から5月にかけて日米、南北、米朝首脳会談が相次いで行われる。情報が錯綜さくそうしている今、状況をどう整理したらいいか明言はできないが、3月26日に北京で中国の習近平国家主席と北朝鮮の金正恩労働党委員長が初の会談を行ったのを契機に、北朝鮮を包囲していた日米韓中の結束がほころび、「日米韓」対「中朝」の対立に戻ったと見ていいのではないか。 ...
【第505回・特別版】政治家は改憲の歴史的使命を果たせ
国基研理事長 櫻井よしこ 3月25日の自民党大会が発した本質的な問いは、危機に当たってわが国の政治家、政党、メディアには、国と国民を守る気概はあるのかということだった。 安倍晋三自民党総裁(首相)は憲法改正を強く訴え、「憲法にしっかりと自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打つ」よう呼びかけた。党大会で、財務省の文書書き換え問題などをめぐって首相の責任を問う声はほとんど...
【第504回】ボルトン補佐官の起用と日本
国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一 ジョン・ボルトン元米国連大使が4月9日付で大統領補佐官(国家安全保障担当)に就任する。ボルトン氏とは過去に6、7回面談したが、気さくでユーモアを解すると同時に、頭脳明晰めいせきで正義感が強い。一度、「あなたのようなレーガン保守は」と言いかけたところ、同氏は遮さえぎって、「私は高校時代、すなわちレーガンがまだ民主党員だった頃から...
【第503回】日米の対北朝鮮政策一致が必要
国基研企画委員兼研究員 冨山泰 米国のトランプ大統領が先週、ティラーソン国務長官を解任した。5月までに開かれそうな初の米朝首脳会談を控えて、米外交の要である国務長官の首をすげ替えることが対北朝鮮政策にどういう影響を与えるか予測し難く、4月に訪米を予定する安倍晋三首相がトランプ大統領と北朝鮮問題への対応を擦り合わせることが重要になってくる。 ●国務長官解任が示す不...
【第502回・特別版】米国の輸入制限は中国を利する
国基研企画委員・東京国際大学教授 大岩雄次郎 トランプ米大統領は8日、鉄鋼とアルミニウムの輸入制限を発動する文書に署名した。同じ日、米国を除く環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)加盟11カ国が、本年度中の発効を目指して新協定に署名した。 指導力を発揮すべき超大国が身勝手な行動に走れば、世界の安定は脅かされる。米国は責任の重さを自覚すべきである。同時に、日本を含めて主...