【第578回・特別版】「債務の長城」が包囲する嘘の経済成長
産経新聞特別記者 田村秀男 5日に開幕した中国の全国人民代表大会(全人代、共産党が仕切る擬似国会)の冒頭で、李克強首相は今年の国内総生産(GDP)の実質成長率目標を6%台前半に設定すると発表したが、真に受けてはならない。習近平党総書記・国家主席も李首相も、経済実態からすれば嘘であっても統計上は達成できると踏んでいるだけなのだ。 ●操作される統計数値 李氏は遼寧省...
【第577回】拉致被害者救出の最後のヤマ場が近づいている
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 ハノイの米朝首脳会談が決裂した後、「米朝関係が緊張した時、日朝接近が起きる」などとして、拉致問題が動くかもしれないという観測が国内に流れた。私は、それはないと判断している。過去2回の米朝首脳会談で、拉致問題は核ミサイル廃棄交渉に組み込まれたから、米朝交渉が進展するまで北朝鮮は日本との交渉に応じないと見るからだ。一方、米朝が進...
【第576回・特別版】虐待防止に必要な専門職育成と「親育ち」支援
国基研理事・麗澤大学大学院特任教授 髙橋史朗 千葉県野田市の小4女児虐待死事件を契機に、政府与党は今国会提出予定の児童福祉法と児童虐待防止法の改正案に体罰禁止を盛り込む方向で調整している。2月27日、自民党の「虐待等に関する特命委員会」は、厚生労働部会との合同会議を開き、児童福祉司をはじめ専門職の増員と専門機関の連携等19項目の提言について協議した。 ●増員・連携だ...
【第575回】韓国大統領の危険な反日演説
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 3月1日、韓国の文在寅大統領は1919年に日本の朝鮮半島統治に抵抗して起きた「3・1独立運動」100周年記念行事で演説をした。日本のマスコミの多くは直接的な日本批判がなかったことから日本に配慮したと評価した。しかし、私は演説で文在寅政権の危険さと反日姿勢がより明白になったと見ている。 ●日米との連携より対北接近 ...
【第574回】欧州民主主義国と対中政策で連携を強めよ
国基研企画委員兼研究員 冨山泰 ベルリンでこのほど日米豪印4カ国協力に関するシンポジウムが開かれ、パネリストの1人としてこれに参加した。欧州でも近年、中国の台頭への懸念が強まり、それに対抗する多国間の枠組みとして、インド太平洋地域の民主主義4カ国による協力体制への関心が増しつつある。 シンポジウムを主催したのは、ドイツの最大与党キリスト教民主同盟(CDU)傘下の有力シン...
【第573回】韓国憲法前文が、日韓友好の障害となっている
国基研理事 首都大学東京名誉教授 鄭大均 韓国国会議長の「天皇謝罪発言」に一文をというのが、国基研企画委員会からの要請であるが、ここではもっと大事なことを記したい。 韓国憲法の前文に、「悠久の歴史と伝統に輝くわが大韓民国は3・1運動により建立された大韓民国臨時政府の法統」を継承するという文があって、それが意味するのは、今日の韓国が1897年に成立した大韓帝国の正統性を継...
【第572回】日印戦略協力を推進せよ
国基研理事長 櫻井よしこ 2月上旬、ニューデリーでインドのビベカナンダ国際財団(VIF)と「不確実な時代における日印パートナーシップ」と題されたセミナーを行った。それに先立って国家基本問題研究所代表団は、モディ首相の国家安全保障顧問を務めるアジット・ドバル氏らとの意見交換、インド工業連盟(経団連に相当)との対話に臨んだ。 私たちを迎えたインドの人々には熱気が溢れていた。...
【第571回・特別版】トランプ一般教書演説と日本――リーダーシップの重要性
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授 島田洋一 トランプ大統領の一般教書演説を日本から見ていて改めて感じたのは、アメリカのリーダーシップの重要性である。 外政分野でトランプ氏が最初に触れたのは、知的財産窃取など中国の国家ぐるみの不正行為をやめさせるとの決意だった。日本も長年被害を受けてきた当事者である。しかし日本政府は手をこまねくばかりだった。「中国共産党のスパイ機...
【第570回】トランプ大統領に対北制裁を緩めさせてはならない
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 2月末にベトナムで、トランプ米大統領が北朝鮮の独裁者金正恩委員長と2回目の首脳会談を持つという。トランプ大統領は金委員長と「恋に落ちた」などとツイッターで語りつつも、対北朝鮮制裁はむしろ強化してきた。経済制裁が効果を上げ、北朝鮮では外貨が枯渇し始め、国内で不満が高まってきた。 金委員長はこれまで、核実験場爆破と米兵遺骨返...
【第569回】日ロ関係改善は子供のゲームではない
国基研副理事長 田久保忠衛 安倍晋三首相が進めている日ロ平和条約交渉には、これまでの両国交渉にはなかった戦略的構想が秘められているらしい。自民党総裁外交特別補佐を務める政治家がワシントンの政策研究機関で講演し、「中国への対抗」のためにも日ロ間で平和条約が必要だとしゃべったという(産経新聞1月9日付)。実際にそうであるかどうかは別にして、国家の戦略に関することを気軽に口にする...