【第107回】国家存続のため「列島強靭化」の政治決断を
京都大学大学院教授 藤井聡 「国家」というものは、栄えることもあれば亡ぶこともある。世界史の中では、超大国であった国が小国、貧国に落ちぶれる例は枚挙にいとまがない。 その一つがポルトガルだ。ポルトガルは18世紀に世界を〝支配〟するほどの強大な国力を誇っていた。しかし、そんなポルトガルの国力を一気に削いだのが「リスボン大地震」(1755年)という巨大地震であった。 死者は6万人に上...
【第106回】震災復興財源の答えは増税なのか
大樹総研特別研究員 松田学 「震災復興の負担を将来世代にツケ回してはならない。だから復興国債を今の世代で償還すべく復興増税を」―。もっともらしい理屈だが、ちょっと待ってほしい。 将来世代へのツケ回しを言うなら、高齢世代への社会保障給付で膨らんできた赤字国債の方ではないか。こちらはなんと60年償還。借り換えを続け、3世代にわたり負担をツケ付け回している。60年とは本来、将来世代に資産を残...
【第105回】外交・防衛軽視政権の船出
国基研副理事長 田久保忠衛 自民党よりも程度の低い田舎芝居を二幕も観なければならない破目に陥り、三幕目が始まったばかりだから、心からの拍手ではなかろう。が、4日の新聞各紙に載った野田内閣の支持率は、日経が67%、読売が65%、共同通信が62%、朝日が53%で、新内閣はおおむね好感をもって迎えられているようだ。低姿勢で国民のために汗を流すと述べた首相が一般の国民に受けたのだろう。 政治家...
【第104回】野田氏の使命は民主党より国家の再建だ
国基研理事・拓殖大学大学院教授 遠藤浩一 民主党の新代表、すなはち次の首相に野田佳彦財務相が選ばれた。 事前の予想では、小沢一郎、鳩山由紀夫といふ二人の元代表の支持を取り付けた海江田万里経済産業相が有利と見られてゐた。実際、海江田氏は一回目の投票で一位となり、野田氏に41票差をつけたが(海江田氏143票、野田氏102票)、決選投票では38票差で敗れた(野田氏215票、海江田氏177票...
【第103回】『決断できない日本』
国基研企画委員・ジャーナリスト 石川弘修 ケビン・メア前米国務省日本部長が著した『決断できない日本』が19日、文春新書で発売された。対日外交に30年間携わったメア氏の観察は説得力がある。結論から先に言えば、現代の日本政治社会の病巣は、「誰も責任をとりたくないから決断ができない。その結果、重要な問題が先送りとなる」体質にあると、氏は指摘する。 3月11日、東日本大震災が起きた時、米側タス...
【第102回】安全対策済みの原発は運転を再開せよ
北海道大学大学院工学研究院教授 奈良林直ただし 東京電力福島第一原子力発電所の事故は、1号機から4号機まで4基の原子炉の事故が同時進行するという未曾有の事態となった。地震で外部電源が喪失した後、速やかに非常用ディーゼル発電機が起動し、緊急炉心冷却系が正常に作動し、原子炉の冷却が開始された。 しかし、高さ15mもの大津波の来襲により、タービン建屋の地下1階にあった非常用ディーゼル発電機が...
【第101回】竹島問題を日韓で議論しよう
衆議院議員 稲田朋美 自民党の「領土に関する特命委員会」で韓国鬱陵島を視察することになった。目的は、我が国固有の領土である竹島を事実上支配している韓国が竹島の領有問題についてどのような認識でいるかを、鬱陵島に存在する独島記念館を視察することにより知ることだった。その上で韓国の政治家や学者と意見交換しようという企画で、国会議員として何の問題もない視察だった。 私が参加を決めたのは7月初め...
【第100回】拉致問題を政権延命に利用するな
国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力 菅直人首相が自らの政権延命策として北朝鮮訪問を模索している。首相の意を受けて中井洽・元拉致問題担当相が7月21日と22日に、中国長春で北朝鮮の宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使と極秘接触をした。政府の拉致対策本部の職員(外務省からの出向者)が同席した。拉致問題で進展はなかったが、話し合いを続けることで合意したという。 中井氏は訪中直前に政府首...
【第99回】六者協議再開を誘う対北支援に反対せよ
国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一 7月22日、2年7カ月ぶりに北朝鮮の核問題に関する六者協議の南北朝鮮首席代表が会談した。米政府内には、北が求める食糧支援に応じ協議再開につなげようとの動きもある。 7月12日、拉致議連・家族会・救う会訪米団(筆者も参加)と面談したキング北朝鮮人権問題特使は、「食糧支援は北によるモニター(監視員)受け入れが条件となる。例えば、支援前と支援後に子...
【第98回】原発保有の意義を再認識せよ
国基研企画委員・東京国際大学教授 大岩雄次郎 菅直人首相の「脱原発依存社会」へ向けた世論操作がわが国の経済のみならず、政治、外交における交渉力を弱体化させる危険性は、計り知れないほど大きい。 エネルギー政策の本質はエネルギー安全保障(国民生活、経済・社会活動、国防等に必要な量のエネルギーを受容可能な価格で確保すること)にあることを肝に銘ずるべきである。 目指すべきはエネルギーのベ...