【第90回】米・パキスタン離反に中国の影
国基研副理事長 田久保忠衛 国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン殺害後、米・パキスタン関係は極度に悪化している。パキスタン政府自体が国際テロにどう対応しようとしているのか不透明だし、米国はパキスタンが持つ世界最大の情報組織「三軍統合情報部」(ISI)とアフガニスタンの反政府勢力タリバンあるいはアルカイダとの関係に疑念を抱いたたままだ。 ここに中国がどのような関わり方をする...
【第89回】ビンラディン殺害が浮き彫りにした情報・司法体制の不備
国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一 日本政府は5月2日、米軍特殊部隊によるオサマ・ビンラディン「殺害」を「歓迎」し、「国際テロの防止と根絶に向け、情報収集を含め、一層の対策強化を指示した」とする首相談話を発表した。が、米軍同様の急襲作戦を行う政治的意思を欠く点はさておき、その情報収集体制も司法体制もいまだ重大な欠陥を抱えている。 ブッシュ政権の貢献―「強化された尋問」と特別軍事...
【第88回】強制的一律避難区域設定を再考せよ!
国基研理事長 櫻井よしこ 福島第一原発から半径20km圏内の警戒区域への住民の一時帰宅が10日から始まる。避難所生活はお年寄りには重い負担である。働き盛りの世代は 仕事も出来ず将来の生活不安がのしかかる。だからこそ、わずか2時間の一時帰宅でも、発表されると歓声が上がった。 住民を避難所生活から解放する工夫を 放射線治療の専門家で静岡県立がんセンター総長の山口建氏は、いま新しい発想が必...
【第87回】お粗末な危機対処の原因は「平和憲法」
国基研理事・駒澤大学教授 西 修 1000年に1度ともいわれる東日本大震災が発生してから50日を経過したが、この間の菅直人内閣の対応はお粗末すぎる。 「非常災害事態」なぜ布告せぬ 第一に、安全保障会議を招集すべきであった。安全保障会議は、「国防に関する重要事項」と「重大緊急事態への対処に関する重要事項」を審議する内閣の最高諮問機関である。今回の大震災が「重大緊急事態」に当たることは明...
【第86回】竹島での大規模工事に抗議する
国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力 韓国政府は竹島で大規模な工事を行うことを決めた。竹島から北西1キロの日本領海内で水中の岩の上に「総合海洋科学基地」を建設する工事の落札が終わり、近く基礎工事が始まる。基地建設には300億ウォン(約22億円)をかけ、2013年に竣工予定という。 竹島では既に3月半ばにヘリポート改修工事が始まり、5月に完工予定だ。どちらも日韓友好関係を揺るがす行...
【第85回】エネルギーについて冷静な議論と見通しを
国基研理事・拓殖大学大学院教授 遠藤浩一 4月17日午後、東京電力の勝俣恒久会長は福島第一原子力発電所の事故収束に向けた工程表を発表し、原子炉の冷却機能を本格的に復旧させ安定した状態を回復するまでに6~9か月の期間が必要だとの見通しを示した。 一定の見通しが示されるやうになつたこと自体は、事故処理の前進を示すものと受け止めていいだらう。命懸けで作業を進めてゐる現場の皆さんに、一国民とし...
【第84回】海洋汚染で「第2のロシア」になるな
国基研主任研究員 冨山泰 東京電力福島第一原子力発電所の放射能(放射性物質)漏れ事故で、東電は「低濃度」の放射能汚染水を太平洋に放出した。放射性物質を海に流すことは、旧ソ連が行った「禁じ手」であり、日本は「第2のロシア」になってはならない。 将来の健康被害に責任 汚染水を放出したのは、「高濃度」の汚染水の貯蔵場所を確保するため、と東電は説明した。しかし、原発事故の専門家で、米ジョージ...
【第83回】禍転じて福と為せ
国基研理事・元民社党委員長 塚本三郎 3月11日の巨大地震以来、余震が連日の如く続いている。大津波も襲来し、その上、原子力発電所の破損による放射能漏れも収まる気配はない。地震の発生は、時の政権及び国民の怠惰に対する「大自然の警鐘」と、釈迦は仏説で警告している。日本の政権の首座に在る民主党は、かつての政権とは比すべきものが無い程に拙劣で、菅直人総理は、国家観無き迷走ぶりである。 大試練を...
【第82回】援助に感謝しても挑発には抗議せよ
国基研理事長 櫻井よしこ 空前絶後の東日本大震災の救援、復興作業に、菅直人首相は自衛隊24万人のうち10万人を派遣した。史上初めて予備自衛官6000人も投入済みだ。国難に全力投球で対処するのは当然だが、自衛隊の半数近くを東日本に集めたことが、北方領土や沖縄・南西諸島を含む日本全体の国防をおろそかにすることになってはならない。 とりわけ中国とロシアには要注意だ。両国は大震災に援助の手を差...
【第81回】欠落する危機対処の枠組み
国基研理事長 櫻井よしこ 巨大地震と巨大津波と複数基の原子力発電所事故。私たちはいま、日本1国を超え、人類の歴史始まって以来の大惨事に見舞われている。この試練に私たちはなんとしてでも打ち勝ち、大惨事を乗り越えていかなければならない。 開かれなかった安保会議 にも拘わらず、菅直人首相及び民主党政権の対処は狂気の沙汰である。地震発生からすでに丸10日が過ぎた3月21日現在も、菅首相は安全...