【第84回】海洋汚染で「第2のロシア」になるな
国基研主任研究員 冨山泰 東京電力福島第一原子力発電所の放射能(放射性物質)漏れ事故で、東電は「低濃度」の放射能汚染水を太平洋に放出した。放射性物質を海に流すことは、旧ソ連が行った「禁じ手」であり、日本は「第2のロシア」になってはならない。 将来の健康被害に責任 汚染水を放出したのは、「高濃度」の汚染水の貯蔵場所を確保するため、と東電は説明した。しかし、原発事故の専門家で、米ジョージ...
【第83回】禍転じて福と為せ
国基研理事・元民社党委員長 塚本三郎 3月11日の巨大地震以来、余震が連日の如く続いている。大津波も襲来し、その上、原子力発電所の破損による放射能漏れも収まる気配はない。地震の発生は、時の政権及び国民の怠惰に対する「大自然の警鐘」と、釈迦は仏説で警告している。日本の政権の首座に在る民主党は、かつての政権とは比すべきものが無い程に拙劣で、菅直人総理は、国家観無き迷走ぶりである。 大試練を...
【第82回】援助に感謝しても挑発には抗議せよ
国基研理事長 櫻井よしこ 空前絶後の東日本大震災の救援、復興作業に、菅直人首相は自衛隊24万人のうち10万人を派遣した。史上初めて予備自衛官6000人も投入済みだ。国難に全力投球で対処するのは当然だが、自衛隊の半数近くを東日本に集めたことが、北方領土や沖縄・南西諸島を含む日本全体の国防をおろそかにすることになってはならない。 とりわけ中国とロシアには要注意だ。両国は大震災に援助の手を差...
【第81回】欠落する危機対処の枠組み
国基研理事長 櫻井よしこ 巨大地震と巨大津波と複数基の原子力発電所事故。私たちはいま、日本1国を超え、人類の歴史始まって以来の大惨事に見舞われている。この試練に私たちはなんとしてでも打ち勝ち、大惨事を乗り越えていかなければならない。 開かれなかった安保会議 にも拘わらず、菅直人首相及び民主党政権の対処は狂気の沙汰である。地震発生からすでに丸10日が過ぎた3月21日現在も、菅首相は安全...
【第80回】日本の真価が問われている
国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力 有史以来、地球上の全ての地震の2割が日本で起きたとか、今回の大震災は千年に1度の大地震だなどといわれている。天災は避けることができないが、起きた後の対応は人間の領域だ。日本政府、いや日本国の真価が問われている。 称賛される国民の沈着さ 国内では部分停電の発表の仕方や、それに伴う交通機関の混乱などで、菅政権への批判が高まりつつある。一方、海外...
【第79回】人選を誤った民間初の中国大使
国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一 外相の突然の交替劇で、少なくとも一時、出先の大使の重要性は増すだろう。丹羽宇一郎氏(元伊藤忠商事社長)が駐中国大使に任命された直後、北朝鮮政策に関する発言を見て、危ういと思った。 「拉致問題の解決だけでなく、日本と北朝鮮との国交回復とか、最終的な目的はそういうところにあるだろうから、それに向けた努力は引き続き必要だ」(SankeiBiz、20...
【第78回】中国でジャスミンの花は開くか
国基研副理事長 田久保忠衛 2月28日付の朝刊各紙は、前日に中国で行われた民主化を求める「中国ジャスミン革命」が封じ込められたと報じた。詳報は新聞に任せるが、2週間前に呼び掛けられた前回20日の集会に比べてはっきりしているのは、①20日の13都市が27日は27都市に拡大した ②当局による事前の取り締まりがますます強化されている―の2点だろう。 3月5日に全国人民代表大会(全人代)を控え...
【第77回】民主党政権の断末魔――もはや解散・総選挙しかない
国基研理事・拓殖大学大学院教授 遠藤浩一 民主党の親小沢系と目される比例選出衆院議員16人が、「民主党政権交代に責任を持つ会」なるグループを結成し、衆院会派からの離脱を願ひ出た。「菅政権に正統性なし!」と威勢はいいものの、党籍はそのままで、一昨年の衆院選で掲げたマニフェスト実現に取り組むのださうな。 中山義活経済産業政務官や松原仁衆院議員らも「2009年マニフェストへの原点回帰」を要請...
【第76回】ロシアの砲艦外交に無力な日本 田久保忠衛
国基研副理事長 田久保忠衛 日本国憲法を中心にした「戦後体制」は、国際環境の現実を前に音を立てて崩れつつあると思う。尖閣諸島沖における中国漁船による海上保安庁巡視船への衝突事件で、われわれは日本外交が何の役にも立たないことを思い知らされた。 ところが、中国と歩調を合わせるかのように、ロシアが爪と牙を剥むき出しにしてきたのである。 北方領土周辺の軍備強化へ 前原誠司外相の2月10...
【第75回】イスラム過激派活性化の危険―エジプトの混乱で
国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一 サダト大統領(1981年、イスラム過激派により暗殺)以来、イスラエルとの平和共存路線を取り、イランのごとき神権政治とは一線を画してきた中東の大国エジプトの政治体制が揺れている。ムバラク政権打倒が、イランや北朝鮮と結ぶようなイスラム・ファシズム勢力の跳梁につながらず、健全な民主化に帰結するか、重要な局面が続いている。 その中で要注意なのが、反ム...