公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

冨山泰の記事一覧

国基研研究員兼企画委員 冨山泰    5月21日、中国空軍機が初めて沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡上空を通過し、西太平洋で日帰り訓練を行った。訓練に参加した最新鋭の爆撃機H6Kは、搭載する巡航ミサイルで米軍のアジア戦略の重要拠点グアムを攻撃する能力を持つ。中国と東南アジア諸国が領有権争いをする南シナ海での中国の岩礁埋め立てをめぐり、米中対立が厳しさを増す中で、中国は訓練の実施を通...

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国基研研究員兼企画委員 冨山泰    中国が主導して年内に設立を目指している「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)に、日本政府からも参加の可能性を探る動きが出ているようだ。とんでもないことである。AIIBの構想は、アジアから米国を排除してこの地域で優越する立場を築こうとする中国の長期戦略の一環として打ち出されたものであり、これに出資国として参加することは、中国の地域覇権掌握に力を...

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 国家基本問題研究所は19日、都内で催した年に一度の「会員の集い」で「国際情報戦をどう戦うか」と題するシンポジウムを開いた。パネリストからは、日本が戦前から戦後に至るまで国際社会の情報戦で敗れ続けてきた実態が報告され、今日でも日本が官民一体となって情報発信に力を入れない限り、中韓両国との歴史認識問題などで勝つことはできないとの危機感が表明された。  ●一連の敗北  登壇した国基研の田久保忠...

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国基研研究員兼企画委員 冨山泰    イラク北西部からシリア北東部にまたがる地域を支配する超過激なイスラム主義組織「イスラム国」が米人人質を相次いで殺害したことで、米国内の「内向き」ムードに変化の兆しが見られる。海外での軍事力行使に消極的だったオバマ政権の外交姿勢がイスラム過激派との対決をきっかけに転換するかどうかを注視する必要がある。  ●米世論に変化の兆し  米国世論...

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国基研企画委員・研究員 冨山泰    米国防総省が中国軍の動きに対する警戒を明確に強めている。6月5日に同省が発表した年次報告書「中国の軍事・安全保障動向」2014年版は、中国軍近代化の狙いが台湾海峡以外に東シナ海と南シナ海の有事への備えにあると断言した点が前年版との際立った違いだ。台湾有事に関しても、中国が第三国(すなわち米国)の介入阻止の準備を進めていることを冒頭の要旨で明記し、警告の度合...

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国基研企画委員 冨山泰    米国は年内にアフガニスタンから戦闘部隊を撤収し、2001年9月11日の米同時テロから13年間に及んだ戦時体制に幕を引く。これにより、米国は国防政策の力点を「現在の戦争」から「将来の挑戦」へ移すが、オバマ政権は将来における国防上の最大の挑戦がどこから来るのか焦点を絞り切れずにいる。3月4日にヘーゲル国防長官が発表した「4年ごとの国防計画見直し」(Q...

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国基研企画委員 冨山泰    6月7~8日に米カリフォルニア州の保養施設サニーランズで行われたオバマ大統領と習近平国家主席(共産党総書記)による米中首脳会談は、21世紀の国際社会が米中主導の2極体制で運営されかねず、日本は脇役に甘んじることを強いられる可能性が否定できないことを思い起こさせた。  ●「新型の関係」で意気投合  習主席は7日の第1回会談後の記者会見で、既...

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国基研企画委員 冨山泰    台頭した中国が独善的な傾向を強め、他のアジア諸国とのあつれきを生む中で、アジアの二大民主主義国家である日本とインドは安全保障、産業、国際政治の各分野で協力を深めるべきであり、それによってアジアの平和と安定に貢献できるという内容の日印共同研究が、国家基本問題研究所とインドのビベカナンダ国際財団(VIF)の間でまとまった。研究報告書は21日に東京とニ...

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 国基研企画委員・研究員 冨山泰    北朝鮮が2月12日に3度目の核実験を強行したことに対し、オバマ米大統領の演説や発言からは、北朝鮮の核武装を何としても阻止するという強い意志が伝わってこない。北朝鮮に核兵器を放棄させることを既にあきらめ、「核武装した北朝鮮」にどう対処するかに早くも関心が移ったのではないかと思えるほどだ。  ●米は北の核武装阻止を断念?  ホワイトハウ...

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国基研企画委員 冨山泰 台頭した中国の軍事的圧力にさらされるアジアの二大民主主義国、日本とインドの安全保障分野での協力拡大を話し合う国際シンポジウムが4日、東京で開かれる。インド側には日本の協力への期待が強いが、現状では日本にできることはほとんどなく、軍事的責任を果たすことに目をつぶってきた日本の戦後体制の問題点をえぐり出す機会になりそうだ。 安保協力に拡大の余地 シンポジウムは国家...

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国基研主任研究員 冨山泰 菅直人首相の諮問機関「東日本大震災復興構想会議」が6月25日に発表した提言で、東京電力福島第一原子力発電所事故への対応や将来のエネルギー戦略に関する記述は不十分と言わざるを得ない。原発問題こそ最重要である今、今回の提言は肩すかしである。 欠落した冷静な分析 復興構想会議の『復興への提言』の本文39ページのうち、原子力災害に関する章はわずか3ページだ。しかもそ...

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国基研主任研究員 冨山泰 東京電力福島第一原子力発電所の放射能(放射性物質)漏れ事故で、東電は「低濃度」の放射能汚染水を太平洋に放出した。放射性物質を海に流すことは、旧ソ連が行った「禁じ手」であり、日本は「第2のロシア」になってはならない。 将来の健康被害に責任 汚染水を放出したのは、「高濃度」の汚染水の貯蔵場所を確保するため、と東電は説明した。しかし、原発事故の専門家で、米ジョージ...

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国基研企画委員・主任研究員 冨山泰 オバマ米政権は対中関係改善を優先するあまり、中国の軍備拡大への対処をおろそかにしかねないという懸念は、中国の軍事動向に関する米国防総省の最新の報告書を読む限り、ほぼ払拭されたと思う。16日に発表された年次報告書は、中国の軍近代化に対する警戒心を思いのほか強く打ち出した。 「ヘッジ」戦略を実質的に継続 米国はブッシュ前政権時代に、「エンゲージ」(関与...

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国基研企画委員・主任研究員 冨山泰 鳩山由紀夫首相の「東アジア共同体」構想が不評である。どのような共同体を目指すのかあいまいなまま観念が先行し、関係国の不信を増幅させている。このような構想を推進することは、日本の国益に反する。 けん制する関係国 米国が東アジア共同体構想への批判を強めているのは、インド洋における自衛隊の給油活動の延長拒否、米軍普天間飛行場の移設合意の履行先送りと並んで...

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国基研企画委員・主任研究員 冨山泰 次の首相になる鳩山由紀夫民主党代表の「脱米入亜」的な主張が米国で波紋を投じた。特に保守派の研究者やメディアから「反米」「反資本主義」と烙印を押され、日米同盟への影響について懸念が表明されている。 核廃絶は大甘 米国の保守派シンクタンク、ヘリテージ財団のクリングナー上級研究員は、8月31日付の論文で、民主党の政策の中には米国の利益に反するものが多く、...

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