公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

有元隆志の記事一覧

産経新聞正論調査室長兼月刊「正論」発行人 有元隆志    中国の王毅外相訪日で鮮明になったことがある。一つ目は習近平国家主席を国賓として招くべきではないということ。二つ目は尖閣諸島(沖縄県石垣市)の防衛にかける政府・自民党の気迫の欠如だ。  ●習主席国賓来日は中止に  王外相の訪日は、延期となった習主席の国賓来日の環境整備が本来の目的だった。ところが、一連の発言によって真...

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産経新聞正論調査室長兼月刊「正論」発行人 有元隆志    中国海警局の公船の度重なる周辺海域侵入によって尖閣諸島(沖縄県石垣市)が危険にさらされている。尖閣の実効支配を確たるものにするため、見習うべき国がある。ほかならぬ中国である。中国共産党は2003年に人民解放軍政治工作条例を改正し、世論戦、心理戦、法律戦の「三戦」による戦術で敵の力を削ぐよう指示している。日本版「三戦」で、攻...

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 菅義偉首相が日本学術会議の推薦した新会員6人を拒否した問題をめぐり、菅首相に対し就任直後にこの問題に手を付ける必要はない、あるいは政治的な労力を使うべきでないとの声が寄せられたという。メディアと「全方位」で付き合ってきた菅首相だけに、安倍晋三前首相を激しく批判してきたメディアの中にも期待感はあった。それでも、菅首相が6人の任命拒否を断行したのは、菅首相が掲げる「縦割り、既得権益、悪しき前例主義の...

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産経新聞正論調査室長兼月刊「正論」発行人 有元隆志    日本学術会議の会員候補6人を菅義偉首相が任命しなかったことを機に、同会議のあり方が問われている。学術会議はその成り立ちから日本とその諸制度を敗戦国の枠組みに閉じ込める「戦後レジーム(体制)の象徴」ともいえる存在であることを押さえておく必要がある。  学術会議は日本がまだ連合国軍総司令部(GHQ)の統治下に置かれていた19...

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産経新聞正論調査室長兼月刊「正論」発行人 有元隆志    菅義偉首相は9月25日夜、中国の習近平国家主席と就任後初めて電話会談を行い、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺での中国公船による挑発行為について「懸念」を伝えた。習主席の国賓来日への言及はなかった。武漢ウイルスの感染状況、香港や新疆ウイグル、内モンゴル両自治区での人権問題を考えれば、国賓来日問題を取り上げるようなタイミングではな...

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 菅義偉首相は省庁改革などの諸課題を断行するためにも、年内の衆院解散・総選挙に踏み切るべきだ。そして、選挙後に「媚中派」の二階俊博自民党幹事長を外すことで、膨張を図る中国共産党に対峙するための国造りに尽力してほしい。 菅首相は14日の自民党新総裁就任の記者会見で「解散の時期というのは、いずれにせよ1年しかないわけだからなかなか悩ましい問題だ」と語った。中国・武漢発の新型コロナウイルスの感染拡...

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産経新聞正論調査室長兼月刊「正論」発行人 有元隆志    安倍晋三首相の退陣表明に伴う自民党総裁選は菅義偉官房長官の圧勝が予想されている。「菅政権」には、中国・武漢発の新型コロナウイルス感染防止と経済対策に取り組むことはもちろんだが、米国が中国の脅威に対応していく構えを強めるなか、日本としても米国との同盟関係を軸に、自由主義、民主主義を中心とした国際秩序を支える一員としての役割を...

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 安倍晋三首相は28日、持病の悪化を理由に後継体制が整い次第辞任することを明らかにした。北朝鮮拉致被害者の帰国が実現せず、憲法改正を実現することなく政権の座を去ることは、首相自身が述べたように、まさに痛恨の極み、断腸の思いだろう。 第1次政権でも持病の悪化から突然の総辞職を余儀なくされた首相が、その後、奇跡のような再起を果たすことができたのも、これらの課題を何としても解決したいとの強い思いが...

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 安倍晋三首相の健康状態をめぐり、様々な憶測が広がっている。それはあくまで憶測であり、首相本人が「体調管理に万全を期すために先般(8月17日)検査を受けた。再び仕事に復帰し頑張っていきたい」(19日、記者団に対し)と言っている以上、体調に一層気を遣いながら、目下の中国・武漢発の新型コロナウイルス対策と落ち込んだ経済の回復、そして悲願とする憲法改正へと邁進してほしい。第1次政権の時のように、突然に辞...

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 米英など5カ国の諜報機関が機密情報を共有する「ファイブアイズ(5つの目)」への日本参加が現実味を帯びてきた。歓迎すべき動きだが、参加にあわせスパイ防止法の制定と対外情報機関の設置という長年の「宿題」も片付ける必要がある。 第二次世界大戦中のドイツの暗号機エニグマ解読協力を起源とする「ファイブアイズ」は、諜報活動に関する「UKUSA協定」を締結している英米、カナダ、オーストラリア、ニュージー...

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 自民党の二階俊博幹事長は自他ともに認める「親中派」である。自民党外交部会などが香港統制を強める中国の香港国家安全維持法に抗議し、習近平国家主席の国賓来日中止を求める決議案をまとめたときも、「日中関係を築いてきた先人の努力を水泡に帰すつもりか」と不快感を示し、決議案を後退させた。二階氏の認識は間違っている。一方的に現状を変更しようとしているのは中国だ。 岸田、石破両氏の二階詣で 決議案...

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産経新聞正論調査室長兼月刊「正論」発行人 有元隆志    中国への過剰な忖度そんたくはやめるべきだ。中国の香港への統制強化を目的とした香港国家安全維持法(国安法)施行に対する自民党と公明党の対応である。主要野党が談話などでいち早く批判したのとは対照的に、与党は正式な談話を出していない。なかでも自民党は部会で習近平国家主席の国賓来日の「中止」を求める非難決議案をまとめたにもかかわら...

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産経新聞正論調査室長兼月刊「正論」発行人 有元隆志    地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画断念を機に、敵基地攻撃能力の保有に踏み切るべきだ。「迎撃ミサイルを発射後、ブースター(第1段ロケット)を確実に演習場内に落とすことができない」として、計画停止を発表した河野太郎防衛相の対応は稚拙であったが、これを奇貨として、これまで日本の防衛政策を縛ってきた極端な「専守...

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 新しい宮内庁参与の一人に兵庫県立大の五百旗頭いおきべ真理事長が6月18日付で起用された。果たして五百旗頭氏は天皇陛下の相談役にふさわしい人物なのか、宮内庁による人選を疑問視する声が相次いでいる。  宮内庁参与は昭和39年から始まり、初代の吉田茂元首相と小泉信三元慶應義塾塾長をはじめ、政官財界や宮内庁長官経験者、学者らに委嘱されてきた。菅義偉官房長官は19日の記者会見で「皇室の重要事項の相談役で...

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 中国による香港版国家安全法制定で、自由や人権が大幅に制限されることを懸念する香港市民の移住の「受け皿」として英国、シンガポール、台湾が積極的に名乗りを上げている。ニューヨークやロンドンと並ぶ国際金融センターである香港の人材獲得も大きな狙いだ。日本としても香港の優秀な人材獲得の好機を逃すべきではない。  ●首相も推進の考え表明  6月11日の参院予算委員会で、安倍晋三首相は「東京が金融面で...

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 「日本に上陸しているもう一つの脅威」と題して、月刊「正論」7月号(6月1日発売)は、西側情報機関がまとめた中国の対日工作の実態を報じている。報告書では、中国側が「日本の政財界のリーダー、エリート官僚に取り入り、経済協力の魅力的な提案を提示し、中国市場参入への有利な条件を申し出る。そうしたことで中国の活動に対する米国などによる批判を抑える工作をしている」と記している。  中国の「工作」に乗っかっ...

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 トランプ米大統領は世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスをめぐって中国寄りの対応をとったとして、WHOからの脱退を宣言した。日本政府は残留するが、トランプ支持の保守派にはWHOだけでなく「国連不要論」も根強い。米国が「一国主義」、「孤立主義」に向かわないように働きかけるのも安倍晋三首相にとっては重要な役目である。同時に「中国封じ込め」のためには、国際機関が中国依存にならないようにしなければな...

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 朝日新聞の名物コラム「天声人語」の決めつけ好きな体質はいまも変わらないようだ。5月12日付では、検察官の定年を延長する検察庁法改正案を批判するなかで「ときの政権の覚えめでたい人の特別扱いが常態化すれば、検察の牙が抜かれる。(法案反対は)当然の危惧であろう」として、東京高検の黒川弘務検事長の定年延長問題を引き合いに出した。  昭和55年7月に成立した鈴木善幸内閣は防衛力強化の方針を打ち出し、8月...

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 安倍晋三首相が武漢ウイルスの緊急経済対策として「減収世帯への30万円」の給付を取りやめ、「1人10万円」の現金給付を決めた。首相は4月17日の記者会見で「混乱を招いてしまったのは私自身の責任であり、国民の皆様に心からお詫びを申し上げたい」と謝罪したが、これに対し「朝令暮改」と批判する声がある。  さっそく、朝日新聞記者は「お詫びを申し上げるということだが、(全世帯に配布する)布マスクや(歌手の...

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 武漢コロナウイルス問題で日本は国家的危機に直面している。にもかかわらず、立憲民主党などの野党はいまだに学校法人「森友学園」問題を持ち出し、安倍晋三首相を追及している。与野党は感染が拡大しても国会を休会にしない方針だが、令和2年度補正予算案など重要法案の処理を除き、直ちに休会にすべきだ。  ●森友とコロナ、どちらが緊急か  元参院議員で慶応義塾大学教授の松井孝治氏は月刊「正論」5月号で、「...

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産経新聞社正論調査室長兼月刊「正論」発行人 有元隆志    中国の習近平国家主席の国賓としての来日が延期となった。武漢ウイルスの終息の見通しが立っていない中で当然のことである。日本政府担当者は延期決定後、筆者に次のように語った。少々長くなるが引用する。  「中国の人権問題はわれわれも問題視している。昨年末の首脳会談で安倍晋三首相は習主席に香港や新疆ウイグル自治区における人権状況...

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産経新聞正論調査室長 有元隆志    ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が解任された。同盟関係を重視し、北朝鮮による日本人拉致事件に理解が深かった人物だけに、日本にとって痛手だ。しかし、国家安全保障会議(NSC)の内幕を描いた『ランニング・ザ・ワールド』の著者デービッド・ロスコプ氏がニュースサイト「デーリー・ビースト」に「(ボルトン補佐官の2018年3月の)就任時から...

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 塚田一郎国交副大臣に続き、桜田義孝五輪担当相が失言の責任をとり辞任した。いずれも政治家としての資質を疑わせる辞任劇である。桜田氏は岩手県出身の高橋比奈子衆院議員(比例東北)のパーティーで「復興以上に大事なのは高橋さんだ」と挨拶し、塚田氏は「下関北九州道路」の整備をめぐり安倍晋三首相らの意向を「忖度した」と発言した。  辞任の形をとったものの、2人とも事実上の更迭である。ともにその場を盛り上げる...

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産経新聞正論調査室長 有元隆志    米国の大統領は再選されるとレームダック(死に体)化が始まり、2期目半ばの中間選挙を過ぎるとそれが加速する。自民党総裁に3選され、今の規定では4選がない安倍晋三首相の場合はどうか。総裁選前にある側近が首相に、レームダックにならないためにも任期途中で退陣する可能性を聞いた。首相は「最後までやり抜く」と言い切ったという。  ●「戦後日本外交の...

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 中国の「韓非子」に「守株」がある。ある日、農夫は一匹の兎が切り株に激突して死んだのを見て、耕すことを止めて、再び兎が切り株にぶつかるのをいつまでも待っていた。つまり進歩のないことを表す故事だ。自民党の岸田文雄政調会長が率いる岸田派(宏池会)がまとめた政策骨子「宏池会が見据える未来」の安全保障政策は、この「守株」と同じだといえるだろう。  ●政策のどこが「リアル」か  政策骨子では「Hum...

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